私がWebデザイナーになって間もないころ、先輩デザイナーに、「我々はアーティストじゃない、デザイナーだ。違いが分かるか」と聞かれその場で答えられなかった記憶があります。
その後調べていくうちに、デザインを学ぶ前にそれぞれの違いを知って、立ち位置を明確にすることは重要な事だと学びました。この記事ではそれぞれの違いを様々な視点から解説します。
デザインとアートはしばしば同じように扱われることがありますが、それぞれの目的やアプローチには明確な違いがあります。デザインは主に機能性と実用性に焦点を当てており、問題解決を目指します。
一方、アートは表現と創造性を重視し、視覚的なインパクトや感情的な反応を引き起こします。この違いを理解することで、より効率良く学ぶことができますので是非最後までご覧ください。
デザインとアートの違いと考え方
デザインとは
デザインは、特定の目的や機能を持つ視覚的な解決策を提供するプロセスであり、主な目的は、ユーザーのニーズや問題を解決することにあります。Webサイトのデザインは、クライアントの課題を解決しつつ、ユーザーが情報を簡単に見つけ、操作しやすいようにすることが最も重要だと考えられます。
Webデザインのプロセスには、調査、計画、スケッチ、プロトタイピング、テスト、そして最終的な実装が含まれます。デザインは美的価値も重要ですが、最も重要なのは機能性です。使いやすさ、アクセシビリティ、そしてユーザー体験がデザインの中心にあります。
ユーザー体験:UX(ユーザーエクスペリエンス)ともいわれ、Webデザインを行う中で重要性が高い概念です。UXは、あらゆる製品やサービスを通してユーザーが感じる使いやすさ、感動、印象といった体験すべてを指します。
アートとは
アートは、個人の感情や考えを視覚的に表現する創造的な活動です。主な目的は、美的価値や感情的な影響を通じて自分以外の人間に何かを伝えることです。そしてアート作品は、しばしば特定のメッセージやテーマを探求し視覚的な魅力を持っています。アートは制約が少なく、自由な表現が可能です。アートは個人の視点や創造性を反映し、視覚的で感情的なつながりを重視します。
歴史的背景
デザインとアートの歴史的背景を説明します。
デザインは19世紀末の産業革命をきっかけに生まれました。 ウィリアムモリスが中世の「ものづくり精神」を改めて掲げたことが始まりです。 やがて、その運動はアーツ・アンド・クラフツ運動と呼ばれ、世界中に広がっていきました。
一方、アートは古代から存在し、宗教的、文化的な表現として発展してきました。ルネサンス期には芸術家が社会的に重要な役割を果たし、創造性と美の探求が盛んになりました。デザインとアートはそれぞれ異なる文化的背景を持ちながらも、現代では互いに影響を与え合っています。
Webデザインへの適用
デザインとアートの要素と原則
デザインとアートにはそれぞれ独自の要素と原則があります。
デザインの基本要素には、色、形、レイアウト、タイポグラフィなどがあります。これらの要素は、視覚的なバランスや調和を生み出すために使用されます。デザインの原則には、対比、リズム、強調、調和、統一性などがあります。
一方、アートの基本要素には、構図、質感、視点、色彩などがあります。アートの原則には、動き、コントラスト、バランス、比率、リズムなどがあります。これらの要素と原則は、デザインとアートがどのように視覚的な作品を構築するかに影響を与えます。
Webデザインにおける考え方
Webデザインはデザインとアートのそれぞれの要素で作成されます。デザインの実用性とアートの創造性が組み合わさることで、視覚的に魅力的で機能的なWebサイトが生まれます。
例えば、Webサイトのレイアウトはデザインの要素を反映していますが、同時に色使いや画像の選択はアートの影響を受けています。優れたWebデザインは、ユーザーがサイトを簡単にナビゲートできるようにし、同時に視覚的な魅力を提供します。デザインとアートのバランスを取ることが、効果的なWebデザインの鍵となります。
プロジェクトでの適用例
デザインとアートの違いを明確に理解するためには、実際のプロジェクトを見てみることが有効です。
例えば、ECサイトのデザインは、ユーザーが商品を簡単に見つけて購入できるようにすることが目的です。ここではデザインの要素が重要となります。一方、アートプロジェクトでは、視覚的なインパクトや感情的な反応を引き起こすことが主な目的です。
アートギャラリーのWebサイトやポートフォリオサイトは、アートの要素を重視しています。これらの例を通じて、デザインとアートがどのように異なる目的を達成するかを理解できます。
スキルセットの違い
デザインとアートには、それぞれ異なるスキルセットが求められます。
デザイナーには、ユーザー体験(UX)やユーザーインターフェース(UI)の知識、タイポグラフィ、色彩理論、プロトタイピングのスキルが必要です。また、デザインソフトウェアの使用にも熟練している必要があります。
一方、アーティストには、ドローイング、ペインティングなどの技術的スキルや、創造的な表現力が求められます。デザインとアートの違いを理解することで、どのスキルを優先的に学ぶべきかが明確になります。
評価基準
デザインとアートの評価基準は異なります。
デザインの評価基準は、主にユーザー体験や機能性に基づいて評価されます。例えば、Webサイトのデザインは、見た目だけでなく、使いやすさ、ナビゲーションの直感性、コンバージョン率などで評価されます。
一方、アートの評価基準は、美的価値や感情的な影響に基づいています。
アート作品は、視覚的な魅力やメッセージの強さ、観客との感情的なつながりで評価されます。これらの違いを理解することで、デザインとアートの成果を適切に評価することができます。
まとめ
デザインとアートの違いを理解することは、Webデザインを勉強する前に知っておいた方がいい知識でしたね。
デザインは機能性と実用性を重視し、アートは表現と創造性を重視します。
このブログを通じて、デザインとアートの違いを深く理解し、自身の作品にどのように取り入れるかを学ぶことができたと思います。実務では、クライアントからヒアリングを行い、機能性(デザイン)を重視するのか、視覚的なメッセージ(アート)を重視するのかそのバランスを測り制作していきます。
コーポレートサイトの製作に関してはほぼ前者が多くをしめます。従って、視覚的な要素の前に機能的な部分。例えばどういったサイト構造にしてどの要素をどのように配置するかをユーザー目線で考えないといけません。
実際のプロジェクトに取り組みながら、デザインとアートのバランスを見極めながらWebデザインしていきましょう。